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「蔵」という言葉
物をしまい込むという意味の「蔵」から、日本の伝統的食文化が誕生しました
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「蔵」という言葉
「くら」と読む漢字

常用漢字の中には『くら』と読む漢字がいくつかあります。それらは同じ意味合いで使われているようですが、実際は少しずつ異なったニュアンスが含まれています。

『倉』という漢字は、穀物をしまっておく高床式の倉庫の象形だとされています。具体的な高床式倉庫の例としては、木材を井げたに合わせて積み上げ、まわりの壁にした『校倉造り(あぜくらづくり)』があり、そのなかで奈良時代に建てられた『正倉院』は非常に有名です。
こうした成り立ちのとおり、『倉』という漢字は『穀物を入れるところ』という基本的な意味を持っています。

これに対して『蔵』は、『倉』と同様に『しまっておく』といった意味がありますが、『かくす、ひそむ、ふかい』というトーンも含んでいます。それは文字の象形からも明らかで、草がぼうぼうとしげっている意味の『茂』と、目を見張る意味の『臣』で構成されており、つまり『大切なものを草むらの中に隠し、上から見えないように草を覆いかぶせ、さらに大きく目を見開いて見張っている』という様子がこの『蔵』に表れています。ですから『倉』とは若干異なり、『物をしまい込むところ、蓄えるところ』といった意味があります。

その他にも、『庫』は『兵車をしまうところ』あるいは『文書をしまうところ』、『府』については財産など『庫』よりも『立派なものをしまうところ』という意味があり、そこから『政府』『官府』といった熟語にもある通り、『重要なものが集まるところ』つまり『司』『役所』といった意味も含まれています。

なぜ食は「蔵」で生まれたのか

日本にはいろいろな『くら』がありますが、『蔵』という漢字の『くら』という場所で、なぜ食が生まれるようになったのでしょうか?

『蔵』の誕生は、人間が物を蓄えるという必然性から生みだされたとされています。原始の時代を経て、人間社会に秩序が生まれてくると、食糧の確保や保存、あるいは農作物などの貯蔵や格納が本格的に始まりました。

『土蔵』を築く左官職人の世界で使われる『紙一枚』という言葉がありますが、これは左官職人の鏝塗り(こてぬり)の技術レベルの高さを示すものです。土蔵の入口や窓は、非常に厚みのあるどっしりとした漆喰の観音開きの土戸となっており、火事の際にはこれらを閉め、たとえ蔵の外側が炎に包まれたとしても、その炎が蔵の中に入ることがないように造られています。この扉には、扉の間に挟んだ紙一枚さえすべり落ちないほどの精度が求められ、これができて初めて一人前の蔵造り職人の仲間入りを果たします。この左官職人のほか、蔵造りにはさまざまな職人がかかわり、それらの高いレベルの技によって生まれる蔵の厚い壁が、内部の温度や湿度を長い期間一定に保つことを可能にし、蔵は日本酒、醤油、味噌などの発酵作用を要する『醸造蔵』としても使わるようになりました。

このように日本の長い歴史やその中で培われた蔵造りの技術、そして各地の風土が育て上げたものが『蔵』なのです。

※参考資料:
「漢字の成り立ち 下村昇の漢字ワールド2」下村昇著 高文研社
「蔵」高井潔著 淡交社
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